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音楽イベントに起因する新型コロナ感染拡大を防ごう【前編】(2022年4月更新)

2021年4月から発令されていた新型コロナウイルス感染症にかかる緊急事態宣言は、いわゆる「第5波」における感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況について分析・評価を行った結果、2021年9月30日をもってすべての都道府県において解除されることとなりました。

その後しばらくは、各都道府県において独自の時短要請等が行われていましたが、それも沖縄県以外では10月25日までの間に順次解除され、少しずつではありますが、社会経済活動の平常化に向けて舵が切られつつあります

しかしながら、2022年1月、新たな変異株であるオミクロン株が少しずつ市中に蔓延しつつあり新型コロナウイルス感染症の陽性患者は、再び大きく増加しています。

日々増加する新規陽性患者数に一喜一憂する日々が再び始まるのか…とうんざりしてしまいそうになりますが、一方で、オミクロン株が流行したからといっても、私たちが取り組むべきことは、変わりません。

それは…

  1. 新型コロナウイルス感染症への正しい理解
  2. 標準的な感染予防策の徹底

そう、この2点です。

本日は、そうした状況の中、私たち音楽に取り組む者たちが、再び感染拡大を起こさないように、どのような点に留意すれば良いかについて、お話ししようと思います。

なお、本日の記事は、国(内閣官房・厚生労働省)のホームページや、「業種別ガイドライン」における音楽系の業種に係る記載内容を参考にしているほか、保健所への取材を通じて作成している旨、申し添えます。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対応について|内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室

この記事はこんな人にオススメ
  1. 音楽イベントにおける新型コロナ感染症対策について考えたい
  2. 不十分な感染対策で実施されるライブが非常に心配だ
  3. ライブハウスクラスターから得た「学び」を活かしたい
  4. 音楽関係者として、新型コロナ対策に真剣に向き合いたい

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第1波におけるライブハウスクラスターで得た「学び」

新型コロナウイルスは、3密(密閉・密集・密接)の環境で感染が拡大することが広く知られていますが、このことを世間に広く知らしめたのが、2020年3月、第1波のときにライブハウスで発生したクラスターでした。

ライブハウスがクラスターとなってしまったことは、音楽に携わる者としては非常に残念ではありましたが、一方で当該ライブハウスが感染拡大防止に積極的に協力してくださり、そしてこのことを教訓に、多くの音楽関係者が新型コロナ対策に留意してくださるようになりました

ですので、最初期の頃にライブハウスがクラスターとなったことは、その後の新型コロナ対策を考える上で、非常に重要な知見が得られた出来事ではなかったかと思っています。

プロのライブでは感染対策はバッチリだけど…

その後、感染拡大に最大限の留意を払いながら、少しずつ音楽活動が再開できるようになってきました。

プロミュージシャンのライブでは、密を避ける観点からの定員の縮小、観客の徹底した体調管理、発声の禁止など、これでもかというくらいに、さまざまな対策が行われるようになりました。

定員の縮小によって、チケットの単価が上がってしまったり、ライブでアーティストと観客の掛け合いができなくなったりと、コロナ禍以前では当たり前だったようなライブの楽しみ方はまだできないのですが、それでも、少しずつ音楽を楽しむ日々が返ってきつつあることに、アーティスト・ファンともに喜びと手ごたえを感じていたことでしょう。

中小規模のライブで散見される不十分な感染対策

一方で、Twitterなどで、中小規模のライブハウス・ライブバーやその出場者の様子を拝見していると…。

確かに、しっかりとした感染管理をしているところもあります。

ただ、一方で、「感染対策は万全です」などと言いつつも、実際の現場は典型的な3密環境となっていたり、大勢がノーマスクで打ち上げをしていたり、感染拡大期でありながら圏域を大きく超える遠征をしていたり…。

残念ながら、いつ感染拡大の原因になってもおかしくないような光景が多々見られたのが現実でした。

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実際、保健所に話を聞くと、ライブハウスクラスターは2021年の第4波、第5波では一定程度発生していたとのこと。新型コロナ感染者が大きく増加した今年になってからは、都市部ではいちいちクラスターの詳細が発表されなくなりましたが、表に出ないところでは、このようなことになっていたそうです。

確かに、改めてTwitterで、第4〜5波シーズンのライブハウス関係者のツイートを見ていると、ライブの出場者が当日になって体調不良で出場キャンセルになったり、イベント自体が突然中止になったりする事例は多々見られましたが、あれは新型コロナの陽性患者が複数出たんだろうなあ…と思わせるには十分なインパクトでした。

このように、プロアーティストのライブでは、しっかりとした感染対策がとられている一方で、アマチュアやセミプロが中心となるイベントでは、感染対策が不十分で、それが感染拡大の一翼を担ってしまっていた…。

社会人として、それなりに社会に対する責任を持ちながら音楽に取り組んでいる者としては、この事実を聞いたときは、率直に言って、残念でした。

プロのイベントでも見られた不十分な感染対策

なお、プロのイベントであっても、感染対策が不十分で、そのことが社会問題になってしまった事例もあります。

既に一般ニュース等でも報じられましたが、2021年8月29日に愛知県国際展示場で開催された音楽フェス「NAMIMONOGATATARI」では、参加者がノーマスクで大声を出していたりが全国レベルで報じられました。

これを受け、愛知県や常滑市、そして音楽業界団体4団体から抗議文が提出され、主催者は最終的に謝罪文を提出しましたが、結果として当該イベントは50人程度の新型コロナ陽性患者を出すクラスターとなってしまいました。

本イベントについては、愛知県が検証委員会を設置し、そこで報告書をとりまとめています。これを見ると、これだけの規模のイベントでありながら、感染対策がずさんであったことが、改めてよく分かります。

NAMIMONOGATARI2021に係る検証委員会報告書を受けての知事メッセージ

とはいえ「音楽イベントに罪はない」

ただし、この一連の事件の中で、愛知県知事は「音楽イベント自体に罪はない」というような説明をし、私たち音楽に携わるものをかばってくださいました。

「音楽フェスは原則禁止にしないのか?」記者から問われた愛知・大村知事の答えが話題に【”密”フェス問題】

記事の中には、次のような記載があります。(強調表示は筆者)

話題になっているのは、記者との質疑応答で出た大村知事の発言だ。

記者は、「音楽フェスは原則やめてくれというような強いメッセージを県として独自に出さないのか?」と質問。大村知事は、「それは違うのではないか」と述べ、イベントの開催制限などは求めない考えを示した。

感染防止策を守りながら事業活動を続ける音楽業界関係者を潰しかねない、という理由からだという。

「それをやると、結局真面目に一生懸命、感染防止対策をやって、音楽業界関係の皆さんの仕事も一生懸命支えたい、両立させてやっていきたいという人を、潰しちゃうことになりますよね。叩いちゃうことになりますよね。それは、私は違うのではないかという風に思いますね。

こういう約束したことを守っていただけない方のために、一生懸命守っている方が被害を受ける、迷惑を被るということは違うと思います」

責任ある立場の方が、雰囲気に流されることなく、真剣に新型コロナと向き合いながら音楽活動に取り組む方のことをかばってくださったことを、私は嬉しく、心強く思ったものでした。

しかし世論の風当たりは厳しく…

ただ、一方で、世論全体を見てみると、世の中になんとなく存在していた「音楽イベントは感染リスクが高い」という懸念を具現化するようなこの事件は、音楽にかかわる者への風当たりを強くしてしまった面は否めません

さらに悪いことに、このイベントの前には、他の大規模フェスイベントの出演者であるプロミュージシャンが深夜に騒いでいる様子が報じられるなど、音楽イベントが色眼鏡で見られてしまうような事案が相次いで報じられているような状況でした。

だからこそ、音楽関係者は真剣に感染対策に取り組もう

このように、一部の感染対策が不十分なイベントのせいで、きちんとした感染対策をやっているイベントまでもが色眼鏡で見られたり、音楽をやっているというだけで批判的な目で見られたりというのは、音楽にかかわる人間としては非常に不本意なところ。

とはいえ、今現実にあるこの状況について、ただ文句を言うだけでは何も解決しません。

今、音楽に取り組む者が意識すべきは、「音楽イベントに起因する感染拡大を防ぐ」ための努力を最大限に行うこと

音楽にかかわる一部の人間が失墜させた信頼を取り戻すには、音楽にかかわる多くの人間の努力の積み重ねしかないなのです。

では、具体的にどのようなことに取り組むべきか…。

少し記事が長くなってきたので、いったんここで筆を置き、具体的な対策については「後編」でご説明しようと思います。

音楽イベントに起因する新型コロナ感染拡大を防ごう【後編】(2022年4月更新)新型コロナウイルス感染症は、2021年秋にかけて、第5波を乗り越え、ようやく落ち着いたかに見えましたが、2022年1月から、新たな変異株...
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