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バンド・SSW

バンドマン・SSWが芸能事務所に所属する意味はない!吉本興業と宮迫の事件に学ぶ。

2019年、世間を賑わしていたのが、雨上がり決死隊・宮迫博之さんとロンドンブーツ1号2号・田村亮さんの記者会見問題でした。

これらの騒動について、情報をよくよく整理していくと、見えてくるのが「芸能事務所の力量」問題。

当ブログの読者層の中心である、バンドマン・SSWさんの中にも、芸能事務所に所属している、あるいは所属を検討している方がいらっしゃると思いますので、今回はこの問題を通じ、芸能事務所というものの存在、そして所属するメリット・デメリットについて考えてみたいと思います。

この記事はこんな人にオススメ
  1. 宮迫問題をきっかけに、芸能事務所について考えてみたい
  2. バンドマンやSSWが芸能事務所に所属するメリット・デメリットを整理したい
  3. 音楽界隈における芸能事務所の事務能力が低いことが気になっていた
  4. 芸能事務所に「企業としての実力」があるかどうかを考えたい
  5. 芸能事務所に頼らずとも活動に取り組める事務処理能力が欲しい


宮迫・亮記者会見事件のあらまし

この件については、既にさまざまなニュースサイト、ブログ等で多々報じられているところですので、当サイトでは概略だけをお示しします。

反社会的勢力の闇営業問題で世論は宮迫氏に批判的に

過去に、多方面への人脈に定評があるカラテカ入江さんの紹介を受け、所属事務所を通さない、いわゆる「闇営業」の形で反社会的勢力の会合に参加した、雨上がり決死隊の宮迫博之さん、ロンドンブーツ1号2号の田村亮さんをはじめとした芸人の皆さん。

当初は「ギャラはもらっていない」との説明だったのですが、後にそれがウソだったことが発覚し、宮迫さん、田村亮さんをはじめ、当該芸人に謹慎処分が下ります。

これらの一連のやり取りの中で、出演テレビ番組は編集により出演シーンがカット、CMはACジャパンのものに差し替わるなど、大きな影響が生じ、またネット世論も、過去の宮迫さんの不倫騒動のときの「オフホワイト」発言を引き合いに出しながら、彼らに非常に批判的なものとなっていきました。

新たな証拠写真で宮迫氏が引退、しかし翌日に緊急記者会見

こうした中、7月19日付けの週刊誌「フライデー」において、新たな反社会的勢力との写真が掲載された宮迫さん。これらを受け、宮迫さんは芸能界を引退するともに、記者会見が行われる予定である旨、報道されました。

しかしながら、上記記者会見はドタキャンとなり、世論はますます宮迫さんに批判的になります。

しかしながら、7月20日の午前11時、宮迫さんと田村亮さんのTwitterで、突然記者会見が設定された旨が公表されました。

記者会見で明らかになった吉本の不適切対応

そして迎えた会見。この場では、

  • 謝罪会見をしたいと思っていたが、事務所である吉本興業に止められていたこと
  • 吉本興業の岡本社長から、録音を回していないことを確認した後、「会見をしたければすればいい。ただし連帯責任で全員クビだ」などと恫喝のような発言を受けたこと
  • 突然、会社の弁護士に「引退会見、もしくは契約解除を選べ」という趣旨の書面が届いたこと。そしてその引退会見では、吉本興業の意に沿うようなストーリーで対応するよう求められていたこと

などの衝撃的な事実が、2人の涙とともに、赤裸々に語られました。

特に、決してトークが上手というわけではい田村亮さんが、素直な言葉で、事実を語りながら、感情が抑えられずに涙ぐんでしまうこの会見に、心を揺さぶられた方は多かったのではないでしょうか。

そして「松本 動きます」

この会見を見た、ダウンタウンの松本人志さんは、Twitterで「松本 動きます」とつぶやきます。

吉本上層部と会合を重ね、翌日7月21日の「ワイドナショー」を緊急生放送にして、現状について非常に厳しい発言を続けた上で、「岡本社長が会見を開くべき」との意見を発せられました。

また、この日の「ワイドナショー」では、「人の心を持たない」と言われている東野幸治さんが感極まって涙を見せるなど、芸人さんたちの危機感が、これでもかというほど伝わってきました。

他方で、松本さんは「(吉本興業の)大崎会長が辞めるなら自分も辞める」など、かつての恩人である大崎会長への恩義を見せる一面もありました。

「スッキリ!」で加藤氏激怒

その後、翌日7月22日の「スッキリ!」では、極楽とんぼの加藤浩次さんが登場。芸能関係の話題で、あまり忖度せずに言いたいことをはっきり言う方なので、世間的にも非常に注目が集まっていました。

ここで、加藤氏は、松本さんと違う意見を「会長も社長も辞めないのなら、自分が会社を辞める」と、鬼の形相で発言し、さらなる話題を呼んでいます。

吉本・岡本社長の会見も…「しない方がマシ」レベル?

そして同日午後、吉本興業の岡本社長による記者会見が行われました。しかしながら、この記者会見は、序盤は弁護士による棒読みの説明、中盤は記者からの質問に対する岡本社長の当を得ない回答、そして必要以上に長い時間をかけてしまったがゆえに生じた、後半のダレた雰囲気、極めつけは最後の身内による「ヨイショ」発言。

そして、質問の中でも、

  • 恫喝的な発言は冗談のつもりだった
  • 「テレビ局が株主」発言は記者会見の中継を配慮してもらえるようにするためだった
  • 現時点ではやめるつもりはない

などなど、世論を逆なでするような回答のオンパレード。「こんな会見なら、しない方が良かったのでは…」と思うほどの体たらくです。

この結果に多くの吉本所属芸人が落胆してしまい、世間の吉本興業に対する評価が失墜してしまっている状況です。

このように、今回のいわゆる「闇営業」問題については、主に吉本興業の対応のまずさに起因して、次々と問題が明るみになってしまい、芸人さん、会社の両方ともが、現在、未曾有の危機に置かれてしまっていると言って良いでしょう。

芸能事務所の「3つの機能」

さて、前置きが長くなってしまいましたが、この話も踏まえつつ…。

そもそも、芸能事務所というのは、何のために存在しているのでしょうか。

思うに、芸能事務所には、次の機能があると考えられます。

1. 芸能活動に伴う各種事務処理を代行する機能

芸能活動をしていると、ライブを企画したり、場合によってはテレビ・ラジオに出演したりといった出来事が生じますが、これらの活動においては、段取りや金銭管理などといった事務処理が発生します。これらを、芸能事務所が代わりにこなし、芸能人が芸に専念できる態勢を整えることです。

2. スケジュール管理、仕事の選別などをこなす、マネージャー(秘書)機能

仕事の日程調整や、どのような仕事を受け、どのような仕事を断るかなどを検討する中で、芸能人のスケジュール管理を的確にこなす機能です。こうした役割をこなす人は、芸能界では「マネージャー」と呼ばれていますが、一般企業ではこうした役回りは、どちらかというと「秘書」という役割で理解されているものだと思います。

3. 芸能人を不測のトラブルから守る機能

芸能活動に取り組んでいると、ファンとの関係性や、活動に対する批判、そのほか諸々のトラブルが発生することが見込まれます。そうしたトラブル発生時に、企業として有している法務能力や広報能力のほか、財務面のアシスト等を通じてトラブルを解決し、芸能人が安心して芸能活動に専念できるようにする機能です。

これら機能の共通点は…

これらの機能には、すべて共通点があります。それは「芸能人が、芸能活動に専念できるよう、企業の経営資源を通じて側面支援をおこなう」こと。

そう、芸能事務所は、本来、芸能人の側面支援を行うための企業であるはずなのです。

芸能事務所の「3つの逆機能」

このように、芸能事務所が本来有しているべき機能を並べてみましたが、一方で、芸能人にとっては、芸能事務所に属することによるデメリットがあるのも事実です。それらを「逆機能」という形で整理してみましょう。

1. 活動方針が事務所主導になる

これは各種事務処理を事務所が行ってくれることと、ある種バーターの関係にある話ではあるのですが、仕事の選別や広報方針の調整などを通じて、どうしても活動方針は事務所主導で決まっていきがちになります。もちろん、事務所と本人との話し合いの中で決まっていけば良いのですが、中には必ずしも本人の意向どおりの活動が出来ていない芸能人の方も見受けられるところです。

2. 事務所を移籍しづらくなる

これも最近、ジャニーズ事務所を脱退したSMAP元メンバーのテレビ出演について公正取引委員会が動いた件が大きな話題になりましたが、事務所を移籍すると、前の事務所との関係性において、これまでの仕事を維持することが難しくなったり、あるいは新しい仕事を得られにくくなったりする傾向があります。特に大手事務所の場合であり、かつ仕事の中にテレビ等のメディア出演が含まれる場合は、この傾向が顕著ですね。

3. 有事の際、最終的には芸能人よりも事務所を優先した判断が行われる

結局のところ、芸能事務所は、複数の芸能人、そして事務スタッフである従業員を抱える企業です。それゆえ、個別の芸能人のトラブルに直面した際、最終的に優先されるのは、1人の芸能人ではなく、複数人の集合体である「事務所という組織」です。その組織の判断基準が、社会通念上妥当なものであれば、まだ理解も出来るのですが、もしもそれが「組織内部の論理」でしかなく、対外的に理解されがたいものであれば…最終的には、芸能人も事務所も、大ダメージを受けてしまいます。

芸能事務所は「組織」である

このように、芸能事務所は「組織」であるがゆえに、その行動規範は、どうしても組織防衛の視点が主になりがち

組織は、組織を守ろうとするが故に、組織の本来ミッションを忘れて行動してしまう…。芸能界に限らず、一般企業・公共的団体においても、よく見られる光景です。

もちろん、個々の社員さんの中には、熱い想いを持って芸能人さんと接してくださる方もいるでしょうが、そんな人であっても、組織のロジックに取り込まれてしまうと「あれ、この人、こんな人だったっけ?」というふうになってしまいます。

組織というのは、恐ろしいものです。

芸能事務所は「企業としての社会的役割」を理解しているか

芸能事務所も、芸能事務所である前に、一つの企業です。

企業は、単に自らの利潤を最大化するためだけに行動すれば良いものではなく、昨今は倫理的視点を持ちながら、社会貢献のような活動を行い、社会に対して責任を果たすことが求められています。いわゆる「CSR《Corporate Social Responsibility》」の発想ですね。

最近は、さまざまな企業等が、CSRの取組に力を入れており、さまざまなCSR事業をホームページ等で公表している姿が見られますが、CSR活動は、「社会に対して責任を果たす」ための手段であり、それ自体が目的ではありません。逆に言うと、いくらCSR的な活動をしていても、社会に対しての責任を果たせないような企業は要らない、というような話です。

こういった、企業の社会的役割を十分に認識していれば、たとえば芸能人に対する処遇を不当に低いものにしたり、パワハラ的な発言で周囲を萎縮させたりするなどといった行為は、通常出来ないはずなのです。

芸能事務所に「企業としての実力」が備わっているか

先ほども申し上げましたが、芸能事務所は、芸能事務所である前に、一つの企業であります。

ということは、単に自らの事業だけをしているわけではなく、総務、経理、広報、法務などといった、いわゆる内部管理的なセクションも有しており、そこにも一定の経営資源を投じなければならないはず。そういった内部管理系のセクションがしっかり機能しているかどうかも、企業の実力を表す一つの目安です。

ところが、芸能事務所には、事務処理を得意とする人が集まっていないのか、こうした内部管理系セクションがまともに機能していないと思われる局面が多々見受けられます。

今回の件も、

  • パワハラ行為を社長自らが行うなど、人事運営を機能させられていない総務
  • 反社会的組織との契約関係等をただちに把握できていなかった経理
  • 「こういうメッセージを発信したら、世論がどう反応するか」を全く読めない広報
  • 法的な視点だけで議論しており、それ以外のファクターを検討の参考に出来ない視野の狭い法務

と、内部管理系セクションがまともに機能していないがゆえに生じたトラブルがたくさん見られます。

そのようなところに、貴重な芸能人を任せて良いのか…非常に、不安になります。

なお、この傾向は、別に吉本興業に限った話ではなく、芸能事務所全般の傾向として見受けられるものです。「体質が古い」と批判されている芸能事務所のほとんどが、トップの独裁政治が敷かれているか、あるいは内部管理セクションにまともな人材がいないかの、どちらかです。

もちろん、大手~中堅事務所の中には、このあたりをしっかりこなせる、素晴らしい事務所が多々あることも認識しています。ただ、吉本のような大手であってもこのような状態に陥っていること、また小規模芸能事務所の事務処理能力の低さを目の当たりにした身としては、やはりこの点を、本件に関する論点として指摘しないわけにはいきません。

バンドマン・SSWにとっての芸能事務所

このように、芸能事務所というのは、一見スゴそうに見えるのですが、その中身をよく見ていくと、十分なクオリティのスタッフを抱えることが出来ず、組織防衛に重きを置いた判断が中心になって、なかなか芸能人ファーストで物事を考えられないような体制になっているところが多いのが現状です。

これは、バンドマン・SSWさんが所属しているような中小の芸能事務所であっても同様です。

このブログでもこれまで指摘しているように、

  • 違法性のある路上ライブを放し飼いにしている
  • ファンとの間に不要な壁を作るプロモーションを行っている
  • にもかかわらず、たとえばSSWおじさんとのトラブルには積極的にかかわらない

など、とても「芸能【事務】所」とは言えないような事務処理能力でバンドマン・SSWさんのマネジメントが行われている事例が多々見られます。

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そのような芸能事務所にマネジメントを委ねるくらいなら、いっそ事務所に属さずにフリーで活動し、必要に応じて豊富な社会人経験のある仲間の力を借りるとか、あるいは自らが社会人として働き、事務処理能力のノウハウを身につける方が、はるかに合理的ではないかと思えてしまうくらいなのです。

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【まとめ】芸能事務所を頼る前に、まずは自分の事務処理能力を高めよう

今回のブログでは、吉本興業の一連の騒動を振り返りながら、大手芸能事務所であっても、十分な事務処理能力を持たないがゆえに、トラブル遭遇時の対応に失敗し、事態を複雑化させてしまうことがあることを確認しました。

すべてがすべてではないのですが、一般論として、やはり芸能事務所というのは、「【事務】所」と名乗る割に、他の業種の企業ほど事務処理能力が十分ではないと感じられることが多いです。

もちろん、活動の規模が大きくなると、芸能事務所に所属するメリットも十分に感じられるのですが、少なくともフリーで活動できているうちは、安易に芸能事務所に所属するのではなく、自らの事務処理能力を高めながら活動に取り組む方が、長い目で見てプラスになるのではないかと考えます。

昔と違い、よい音楽、よい活動をしているだけで売れる時代ではありません。社会人としての常識、知識、経験をしっかり身につけながら、それを活かした活動を行うことが、これからの芸能人、そしてアマチュア~インディーズのバンドマン・SSWさんにも求められるのではないか…

そんなことを考えさせられる、今回の吉本興業のお家騒動なのでした。

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