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チュート徳井を教訓に…ミュージシャンさん、税務申告してますか?

先日、お笑い芸人・チュートリアルの徳井さんの所得隠し・税金未申告が大きな問題になりました。

あのニュースを見ながら、ふと思ったことがあります。

バンド活動やSSW活動をしているミュージシャンの方、税金の申告、どうしてるんだろう…

きょうは、音楽活動と税金について、考えてみたいと思います。

なお、本稿では、あくまで一般論としての税制度について説明しています。個別具体の案件に関する申告の内容や税額計算などについては、必ず、税理士等の専門家にご相談いただきますよう、お願いいたします。

この記事はこんな人にオススメ
  1. ミュージシャンの確定申告について知りたい
  2. アマチュアのバンドマン・SSWでも確定申告の必要があるか聞きたい
  3. 所得税と住民税の申告の違いについて教えてほしい
  4. バンドマン・SSWの所得が事業所得か雑所得かを調べている
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一般論としての「確定申告の義務」

まず、音楽の話に入る前に、一般論として…もっと言えば、一般常識としての確定申告の要件を勉強しておきましょう。

これらのルールについては、所得税法等の法令によって定めがあるのですが、ここでは小難しい話は省略して、「既に会社員・フリーター等として別の給与所得を得ており、それ以外の所得が発生する場合」という、今後の議論につながる場合に特化して説明を行います。

既に給与所得がある人の場合、端的に言うと、「給与所得以外の所得の合計金額が、年間で20万円を超える」場合は、確定申告が必要になります。

逆に言うと、「年間所得20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要」というわけなのです。

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注意!20万円以下でも住民税の申告は必要!

ただし、「年間所得20万円以下だから、税申告の義務はない!」と安易に考えるのは、あまりに早計です。

というのも、これは国に納める、所得税の確定申告に限った場合。お住まいの地方公共団体に支払う住民税については、所得が20万円以下であっても、申告の義務があります。

一般的なキーワードで検索してヒットする記事の中には、この住民税申告義務について記載漏れのものも目立ちます。くれぐれも、ご注意ください。

ちなみに、所得が20万円を超えている場合は、所得税の確定申告を行うことで、当該申告書の写しが地方公共団体に転送され、住民税の申告を兼ねることになりますので、所得税の確定申告を行った場合は、住民税の申告行為自体は不要です(結果として同時に申告をしたことになります)。

かとうたかこ
かとうたかこ
所得税の確定申告は、住民税申告の上位互換のようなイメージですね。

音楽活動で生じる収入

ということで、「所得を得た場合、何らかの形で税申告の義務がある」という一般論を確認したところで、次、本題の「音楽活動の中で得た収入に対する申告」について整理していきましょう。

たとえば、バンド活動、SSW活動をしていると、ライブハウスのチケット収入や物販などでお金を得ることができます。また、サポートミュージシャンの方は、サポート演奏の対価としてお金を得ることもあるでしょう。最近は、個人で楽器レッスンを請け負い、講師謝礼を受け取っている事例も見かけます。

このように、活動の中で得られた金銭的対価を「収入」と言います。

「と言います」って、そんなん当たり前でしょ、と言わないでください。後でこれに対応する言葉が出てくるので…。

収入から必要経費を引いた「所得」に課税されます

さて、この収入がそのまま、課税対象になるかというと、そうではありません。この収入を得るためにかかった経費…必要経費を収入から引いた後に残る利益、これを「所得」と言いますが、この所得に対して、税金がかかるのです。

音楽活動だとわかりにくいですが、一般的なお店屋さんでイメージすると、たとえば店先で100円のリンゴを1つ売ったとして、その売り上げである100円にそのまま税金がかかるのではなく、たとえばそのリンゴを80円で仕入れているのであれば、「収入100円-必要経費80円=所得20円」に対して税金がかかる、というわけなのです。

必要経費とは…

さて、この必要経費。国税庁のホームページでは、関連法令等に基づき、次のように定義されています。
No.2210 やさしい必要経費の知識|国税庁

  1. 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
  2. その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

1.に関して言うと、「直接要した費用」というところが、そして2.に関しては「販売費、一般管理費」というところがキーになってきます。

これらを踏まえながら、音楽活動に落とし込んで考えてみるのですが、たとえばライブのチラシの印刷経費や、CDのプレス代、ライブ会場の借り上げ料などは、収入を得るために「直接的に要した」必要経費に当たるのではないかと考えられます。

では、ギターなどの楽器代はどうか。このあたり、明らかに「収入を得るためにのみ用いており、個人の趣味では一切使用していない」ということが言いきれれば必要経費になる可能性がありますが、実際そこまで言い切ろうと思ったら、相当なレベルのプロミュージシャンでなければ難しいでしょう。(なお、10万円を超える資産については減価償却費の処理が必要になるなど、他にも論点があります)

これに限らず、必要経費に算入することができるか否かというのは、税務調査においてよく税務当局と納税者の間で見解が分かれるなど、非常に判断が難しいところです。安易に考えることなく、税理士等の専門家と十分に協議をされることをおすすめします。

事業所得と雑所得

さて、そのようにして計算された所得なのですが、この手の所得については、大きく「事業所得」と「雑所得」に分かれます。

「どっちで申告すれば良いんだろう」と迷われる方も多いようですが、概ね、次のような判断基準になるようです。

  • 事業所得:自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意志と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得
  • 雑所得:事業所得など、他の所得には当たらない所得

これらを総合的に踏まえると、一般的には給与所得を得ながら他の活動によって得た所得を事業所得として申告するのはハードルが高いと言われています。事業所得の場合、損失が出た場合の損益通算などのメリットも多いのですが、一般的な音楽活動のレベルで事業所得が認定されるのは厳しいと理解しておくべきでしょう。

【まとめ】徳井さんの件は「対岸の火事」ではない…まずはしっかりと経理を!

このように、バンドにせよ、SSWにせよ、音楽活動を行う中で金銭を得る行為については、基本的には税申告が必要になるということを、本記事の中でご説明させていただきました。

個人的な経験ですが、私の周りにいるバンドやSSWさんの中で、税務申告に関することが話題になったことは、実は一度もありません。

一方で、先日のチュートリアル徳井さんの事件のように、所得税等の税金について、未申告のまま放置しておくと、後でとんでもないことになってしまう場合があるのも事実です。

加えて、一般的なバンド等の音楽活動のみならず、特に最近、サラリーマンの世界において副業を認める世論が高まりつつあり、そうした流れもあってか、会社員をしながら副業で楽器講師を行っている方をSNSで拝見したりします。また、音楽イベントと食のイベントを一体的に展開する中で、ライブ会場で飲食物の販売をしているような事例も見かけますが、こうした活動においても、税務申告の必要性を認識しながら金銭を受け取っている事例は少ないと感じます。

チュートリアル徳井さんの事件のときに、ネットのコメント等でさんざん見られた言葉です。

納税は国民の義務」。

バンドマン・SSW等のミュージシャンの方は、これを「ネットニュースの他人事」として見るのではなく、「我が事」として、しっかりと向き合わなくてはいけません

あのような形で、自らの音楽活動を終わらせてしまうことのないよう…。

まずはミュージシャンの皆さんも、納税の義務について理解した上で、その義務を果たすことができるよう、まずは日々の活動の経理をしっかり行ってみると、良いかもしれません。

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